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I

大学の2年先輩のIさんは、とても好きにはなれなかった。

何より言動がいい加減で信用ならない。

少しも勉強せずにゲーセンに入り浸り、留年しても反省はなく、

結局卒業時は同級生になっていた。

医者になっても、処方量を間違うので危ないことこの上なく、

かといって間違いを指摘するとブチ切れるので、

看護師に泣きつかれた同級生が処方箋を陰でチェックしていた。

いつの間にかいなくなったと思ったら、北海道に行ったと聞いた。

そして、その後の消息はわからずみんなに忘れ去られていた。

どこでどういう経緯をたどったのかわからないが、

その彼は大船渡で開業医をしていたらしい。

今になって調べると海岸線からすぐ近くのクリニックだ。

2011年3月11日のその日。

地震が来てクリニックの職員はみんな階上階に避難したのだが、

ペットを連れてきていないことに気付いた彼だけが階下に降りた。

そこに、津波が来た。

そして、その後彼を見た人はいない。


その話を聞いたときに思ったのは、悲しみでも衝撃でもなく、

「いやー、ひどい目に遭っちゃってさ」

と言ってひょっこりみんなの前に現れるのではないかということだった。

あれだけ、いい加減だったのだから、

そのくらい、いい加減でもいいじゃないか、ねぇ、先輩。


桑田佳祐の「明日のマーチ」

もう一度逢えたら、あるがままの姿で。

此処を歌うたびに彼のことを想う。


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